写真に写っていないものを、読み取るという仕事。

雑誌をめくりながらイメージを探す人の手元。カウンセリングでのイメージ共有を連想させるシーン。
「この写真みたいにしたい」——その本当の意味。

「こんな感じにしたいんです」

初めてのお客様とのカウンセリングで、よく見せていただくのが“イメージ写真”です。

ヘアスタイルの切り抜き、SNSで見つけたお気に入りの写真、有名人のスナップ、ファッション誌の1ページなど——。

写真はとても便利なコミュニケーションツールです。
言葉では伝えにくい「なんとなく」のイメージを共有できるからです。

でも、僕がいつも意識しているのは、
お客様が見せてくださる写真は、必ずしも「髪型」だけを見て選ばれているわけではないということ。

写真の“どこ”にフォーカスされているかによって、伝えようとしている本当の気持ちがにじみ出てくることがあるんです。


写真の“切り取り方”に、お客様の心理が現れる

たとえば——

  • 後頭部だけの写真を見せてくださる方は、立体感やシルエットにこだわりたい気持ちをお持ちかもしれません。
  • 顔まわりだけをズームした写真であれば、前髪や輪郭の印象、目元にかかる髪のニュアンスなどに注目している可能性があります。
  • 全身写真やファッション誌の1ページなら、そのヘアスタイルが放つ“雰囲気”や“世界観”に惹かれているのかもしれません。
  • 時には、人間ではなく風景やアート、イラストのようなものを参考にされる方もいます。

写真は髪型だけを写しているわけではありません。

そこには、その髪型を通して見せたい「自分自身の未来の姿」や「なりたい印象」が映し出されています。


髪は、「なりたい自分」を表現するための手段

僕は美容師として、髪のプロフェッショナルとして、
もちろん技術的な部分、再現性や髪質との相性などは徹底的に見ています。

でも、それだけではありません。

お客様が、なぜその写真を選んだのか。
その写真のどこに惹かれたのか。
そこに込められた願いや期待、不安や葛藤——。

そういった感情を読み取ることも、僕の大切な仕事だと思っています。


大切なのは、「髪」ではなく「人」。

ヘアカットもカラーもパーマも、どれも「髪に触れる」仕事ですが、
僕が本当に向き合っているのは、“髪の毛”ではなく、“その人自身”です。

お客様が、どんな表情で日々を過ごしたいのか。
どんな場所に行きたいのか。
どんな人と、どんなふうに関わっていきたいのか。

そういった人生のシーンや心の在り方まで含めて、髪型をデザインするのが僕のスタイルです。


言葉にならない想いこそ、大切に。

もし、カウンセリングのときに「うまく説明できないんですけど…」と不安に思う必要はありません。

写真でも、言葉でも、仕草でも、目線でも。

その“言葉にならない部分”にこそ、あなたの本当の気持ちが隠れていることがあります。

だからこそ僕は、写真の「写っていない部分」まで、丁寧に感じ取るようにしています。

髪を通して、あなたの人生が少しでも自由に、心地よくなるように。